なにごとも習熟するということは非常に素晴らしいことです。

ガイドなどの野外活動引率活動においても同様です。この習熟により危険を予測し、発生可能性のある事故状況を想定しそれを予防するのです。基本的に想定内、準備の内側のことであります。
未知の事柄に対しては、習熟により、ある程度の回避、多少の緩衝的な効果や被害の低減は期待できるかもしれませんが、確度の高い対応ができるかといえば、残念ながら不充分でしょう。

3.11の地震発生の折。発生時に潜水していて知らなかったケースはともかくとして、津波の到達予測時間発表後に「それまでは自分のところは大丈夫ってことね」と判断して、津波警報下で改めて潜水を開始したところが国内において何か所もあったと聞きました。
もしそれが本当だとしたら、リスク管理において致命的な判断ミスだと言えるでしょう。

今朝も福島沖での地震、そして津波が発生しました。
そして津波警報のなかサーフィンをしている姿がSNSで紹介されており、「ああ、結局こういう人が出るんだなぁ・・・。」と非常に残念に感じています。

津波ということ自体が日常的に起こらないうえ、遭遇したらどうなるかの検証や情報はあまり出回っておらず、ルーチンとしても確立されていないこと。前代未聞の大地震が起きており、その被害状況をも知らされつつあったこと、津波を経験しているとは思えないこと。津波の警報も出ていたこと、また、この地震や津波自体があまりに大規模で、継続的にあるいは連鎖的に発生する可能性が否定できない(想像できない)こと。などから考えれば、これは一般的に考えても十分に催行中止の要件を満たすものででしょう。
その際に実施した実施者から見れば、評価としては局地(発生域周辺)的に影響が甚大な状況ではあるが、当地での大きな影響の発生の確率は低く、発表されている到達時間も十分に先である。したがって自身に影響が降りかかる可能性とリスクは低いという判断がなされたと想像できます。
(極端なたとえをすれば、飛行機事故のような感覚でしょうか。事故発生の可能性は限りなく低く、その状況を自信に置き換えて想像することは難しい。しかし、いったん事故となれば生命を含め最大級の被害が発生するような事態)

もちろん結果だけ見れば事故は起こっていないので、「大丈夫だったんだから文句を言うな」という考えもあるはずですが、個人的にはその考えを許容しかねます。

ここでいう「大丈夫」が「何もないはずだから大丈夫」「何かあっても自分(達)は大丈夫」ならば、それは過信以外の何物でもなく、その結果の誤った判断です。

引率という立場での危機管理の観点から見れば、習熟とは様々な経験を積み、危険を回避する能力を上げることであり、あえてリスクをとりに行くためものではなく、未知のリスクに遭遇してから効果的に排除、回避するためのものではないのです。